知人から聞いた話なのですが、とあるプロバイダで深夜メンテに対して毎回クレームが入るお客さん
が居るとかで、どうやらネットゲーマーらしいと言う話を訊きました。
(勿論個人情報に値する内容は聞いてませんよ…当然守秘義務でしょうから。)
しかも、比較的影響度の低い夜間帯作業にも関わらず、毎度のようにメンテが遅延すると苦情が
入るそうです。
このサイトが知人バレしているのも有り(苦笑)、同じゲーマー扱いをされてしまっているようで、心なし
か声色が冷たかったような気もしました(汗)ので、今日はベストエフォートについて少し話してみたいと
思います。
あくまでもサービスを行う者の視点からの発言ですので、不愉快な意見に感じるかもしれません。
「日本語が不自由な人だ」と取って頂き、長い目で見て頂けると幸いです。
勿論、異論、反論、共感その他お気軽にお待ちしています。
昔では高かった価格が段々と下がっているといわれても、実際問題としてあまりピンと来ないでしょう。
でも、わずか5〜6年前、まだインターネット接続の主流はダイヤルアップで、回線速度もせいぜい
ISDNでの128kbpsと低速だったのです。そのわずか5年程前、今から10年ほど遡れば、パソコン通信
でのアナログモデム接続、当然ながら通常の3〜4分10円の通話料が掛かる他に、1分10円程度の
接続料金が掛かっていたのです。しかも、市内にアクセスポイントが無ければ更に倍以上の通話料金
となりました。
テレホーダイというサービスをご存知の方も多いかと思いますが、これは23時から翌8:00までの指定
した2電話番号への通話料が1ヶ月1,800円(同一区域内)になるというサービスが、僅かながら電話
料金削減に貢献する程度で、通信料が馬鹿にならず、基本は自動巡回ツールなどで通信料金を
削減するという利用方法が主流だったのです。もっとも、学生寮暮らしで自宅に電話を引いていな
かったので、この時期は私はまだパソコンでの通信はほとんど行っておらず、友人宅でPCと電話回線
を借りて通信していた記憶があります。
(それでも悲鳴をあげそうな月額課金を数度と無く発生させてしまいましたが…)
当時は大手プロバイダでも従量固定制という月15時間まで2,000円、超過すると1分10円という
料金体系も多く、月30時間も使おうものならあっという間に数少ない財布の中の福澤先生に羽が
生えてしまう始末で、おかげで電話も引いていないのに従量固定制プロバイダの掛け持ちなどという
無茶をしていた始末です。
(ちなみに友人とは電話代の代わりにプロバイダ代を肩代わりするという条件も有ったので、迷惑を
掛けっぱなしでは無かったのですが、実際には通話料も馬鹿にならなかったはずです。)
当時、Webチャットにハマッてしまい、しかも当時のプロバイダのサーバも貧弱で、テレホタイム(上記
のテレホーダイ時間帯)に至っては発言してから相手の返答をもらえるまで5分くらい掛かるのも茶飯事
でした。それでもコミュニケーションが実感できたのは事実です。
大分話が逸れましたが、その時代から10年も過ぎて、現在では当時考えられないような高速通信
が常時使用出来るのが当たり前の時代になりました。まだまだ高いとは言え、場所によっては月
7,000円も出せば光ファイバーで100Mbpsという帯域を自宅に引き込めます。
しかし、その大半の部分でよく目にするのが、今回のタイトルにもしていますが「ベストエフォート」と
いう条件なのです。
ベストエフォート(Best Effort) e-Words
簡単に言うと、”あくまで最大限性能を発揮できればその値が出る”という意味であり、その値を保障
している訳ではないということです。
つまり、「駄目なときは諦めてね」と言われても仕方が無いという契約になります。
勿論、可及的速やかに対応はしてもらえますが、部品がすぐに用意できない場合や、深夜早朝で
技術者の手配が出来なければ、相当の時間が必要になることも考えられます。
あと、このベストエフォートですが、確かに新規勧誘時の説明でもあまりなされていない時期があり、
特にADSLの場合は顕著に出てしまうので、結構問題になっているようです。
特に、広告には最大50Mbpsと書いていても、実際には数Mbpsしか出ないことも珍しくなく、
マシンやルータ、HUBなどの環境次第では高速回線に耐え切れないことも有るので、宅内機器が
転送速度の足を引っ張る事もあるのですが、正直この辺は契約者、プロバイダどちらも知る由が
ありません。にもかかわらず最大速度が出るかの如くPRしているのが、消費者に対して誤解を招く
原因になっているようです。まぁ長期間使っている人間にとっては、昔の28.8kbpsのモデムの時代を
知っているので、さほど気にしてはいないのですが…。未だにAIREDGE接続で使う機会もあるので、
余程データのダウンロードを行うとかでなければ気にしない方だったりします。
逆に、ISDNでの通信はギャランティ型サービスと言い、「必ず指定の帯域を保障し、故障時にも即座に対応します。」という条件
でのサービスになります。
インターネットの世界は元来ベストエフォート型のサービスなので、末端で品質保証が出来たと
しても、中間の経路では一切保証が出来ないといった制約があるため、あまり部分的な品質保証が
意味をなさないと言うのも事実です。その為以前ではアナログより高速であることを売りにしていた
ISDNよりも、パフォーマンスが変動する代わりに天井も遙か高いADSLの方がインターネットにマッチ
した為、個人向けのISDNが下火になってきたのです。
一般的に、ギャランティ型サービスはベストエフォート型サービスの帯域単価での数十〜数百倍の
価格差があります。(ちなみに、東京-大阪間の128kbps専用線で15〜30万円/月程度)
インターネット用だと100Mbps級の光ファイバが5000円前後で引き込んで貰えることを考えると、
比較にもならない料金なのです。
但しその代わり、24時間365日、故障時の対応を約束してくれます。
当然冗長構成(部分的な機器故障に備えて、複数の予備機材や迂回経路、場合によっては
夜間の作業要員)を全て用意して、万一故障しても即座に対応し、短時間での復旧をする為の
コストを考えると、高額になるのは仕方が無いのです。ネットワーク機器は1台数千万円とかの物も
少なくありませんし、何より人件費は見た目以上に高コストです。
こういった理由で、光ファイバ全盛の時代でも、コンビニや金融機関、企業の本支店間ネットワーク
としてISDNは未だに現役なのです。
どこのプロバイダでも、余程の法人契約で特別な費用負担をしていなければ、契約約款上は
突発的メンテナンスは不可抗力であり、保障できない旨の文言は必ずあります。
企業向けサービスだと、大抵SLA(Service Level Agreement)という契約書が必ず締結されて
おり、障害発生時には何分以内で障害報告を行い、何時間以内に初期対応をするかまで厳格
に定められています。
(あくまで故障箇所や状況による為、”何時間以内に直します”と言う保障は出来ませんが…)
当然、その契約を守る為にかかるコストも考慮したサービス料金になる訳です。
また、契約次第では利用料金の減免や、停止時間に応じた損害賠償等も含められる訳です。
営利企業である以上、コストに見合わないサービスは出来なくて当然なのです。
こういった時に、「お客様は神様」とばかりな態度を取る人は、どうも見ていていい気はしません。
無保証に近い低価格サービスで、そこまで「停止した場合のリスク」をリスクとして重視するので
あれば、自分自身で複数のプロバイダを使い分ける等の自分で対処する事も可能なので、そう
すべきだと考えます。
「停止しないサービス」というのは現実的に困難な為、「コストを掛けてでも完全停止を免れるか」
「止まったら止まった時と割り切ってサービスを受けるか」のどちらかを選ぶ必要があるのです。
大抵の場合は、個人レベルでは「障害時は割り切って受け入れる」ことを選ぶでしょうけど…。
障害など無いに越したことは有りませんが、現在のプロバイダ料金というのはそれを加味しての価格
であるということは理解しておく方が良いと考えます。とはいえ、障害やメンテ率が他のプロバイダと
比較して多ければ、プロバイダ側も当然改善すべきであり、それが出来なければ顧客満足度が低下
し、満足度の許容範囲を超せば他のプロバイダに乗り換えられてしまう訳ですから、会社としての
努力が必要と言うことに繋がる訳です。
要望は大いに出すべきですが、本来は約款以上のことを要求するのは筋違いだと考えます。
ううむ、どうも上手く纏まらない…(汗)